2018年5月20日日曜日

ブルベでeTrexの道案内機能を使う

ブルベでの定番GPSといえばGARMINのeTrexシリーズ。コースを地図上で表示しトレースするのが一番お手軽な使い方だけど、実は道案内機能が超オススメ。それをブルベで使う方法をまとめてみました。記事はとっても長いです。
自分は英語版のeTrex30xに日本語版のOSM(Open Street Map)地図を入れて使用中。なのでメニュー表示は英語。ということで以降の説明も英語メニューが基本です。

1. 道案内機能とは?
2. eTrexでのナビ
3. ウェイポイント、トラック、ルート
4. ブルベでのナビ
5. BaseCampの入手と起動
6. ルートファイルの作成
7. ルーティングできない場合の回避策
8. 実際に使ってみる
9. 運用までのまとめ
10. ファイル拡張子について
11. マーカーピンの変更
12. GARMIN用OSM地図
13. トラックファイルへの謝辞

1. 道案内機能とは?
道案内機能とは道路にそって目的地までルーティングしてくれて、そして曲がる場所を通知してくれる機能。ナビ経路から外れるとリルートもしてくれる。言ってみればカーナビと同じ機能であるが、それを自転車で利用できるのはとても便利。曲がる場所が近づくと、ビープ音と画面表示で通知してくれる。地図上には曲がり方を示す矢印が表示される。

この道案内の通知があると、曲がり忘れを防いでくれ、ルートミスを最小化できる。ブルベにはもってこいの機能だ。

2. eTrexでのナビ
道案内機能はナビ機能の一部。ナビ機能は目的地をセットする事で起動する。トップメニューにある 「WhereTo (J:目的地検索)」から目的地の設定を行う。
WhereTo (J:目的地検索)」に進むと、目的地にセットできる項目一覧が出現。
     
Waypoint(J:ポイント)、Track(J:軌跡)、Route(J:ルート)の他、OSMには日本のロケーション情報があり、レストランや駅や都市がプリセットされていて目的地として設定可能である。探索される道順は、使用している地図に依存するので、道路情報をもっていない地図であればこの機能は使えない(OSMは大丈夫)。一方通行等の情報はどれだけ加味されて探索されるかは不明なので、実際に使う場合はこの点には注意が必要である。


3. ウェイポイント、トラック、ルート
前述の通り、道案内機能を使うためにはナビを実行する必要がある。ここで重要なのがウェイポイント、トラック、ルートという定義。ナビの目的地は3種類共設定できるが、どの情報を目的地とするかでナビの動作が異なってくる。GARMIN用語なのかGPS用語なのかはわからないけど、eTrexを使う上でこれらはきっちり理解する必要がある。
  • ウェイポイント
    単一のポイント(GPS座標)をもった地点情報。あらかじめ地図に登録されているレストランやガソリンスタンド等のロケーション情報はすべてウェイポイントの種類。ウェイポイントを目的地としてナビを開始すると、そこまでの経路はeTrexが算出し、その経路に対して道案内機能が動作する。目的地をピンポイントで指定し、それまでの経路はeTrexまかせでナビが実行される。
  • トラック
    複数のポイント(GPS座標)をもった軌跡情報。GPSロガー等が出力する情報はトラックの種類。ルートラボからダウンロードできるGPXファイル等もトラックである。トラックを目的地としてナビを行う事もできるが、道案内機能が動作せず、地図上にトラックが表示されるだけである。個々のトラックの地図への表示設定も行えるので、トラックを目的地としてナビを行うメリットはあまり無いような。
  • ルート
    トラックと同じく複数のポイント(GPS座標)をもった情報。ウェイポイントを複数もった線情報という理解が近い。ルートを目的地としてナビを動作させると直近のポイントまでの経路が探索され道案内機能が動作する。そのポイントに達すると次のポイントまでの道案内、という事が繰り返される。ポイントをうまく作ると、計画した経路をトレースするナビを実行できる。


4. ブルベでのナビ
ブルベは目的地というより経路が指定される。この点からウェイポイントを目的地としたナビよりも、トラックやルートのような軌跡を目的地としたナビのほうが理にかなっている。ただ使いたいのは道案内機能なのでルートを使う必要があり、そのためにはルートファイルを作る必要がある。このルートファイルを作る作業がなかなか大変。
意図した経路が算出されるためにはトライ&エラーで何度もルートを作り直す必要があるし、さらにeTrex実機で動作するかの確認も必要だ。もちろんうまく動作しない場合もあり、その場合回避策を駆使して運用できるものにしなくてはならない。

作成コストに運用コスト。コストはそれなりに高いが、使ってみるとわかるが道案内機能のメリットはそれをはるかに上回る。道案内機能があればルートミスは最小化できるし、特に夜間や雨天等、いちいち地図を見る事すら大変な状況で曲がる場所を通知してくれるメリットは計り知れない。
もちろん導入時やコツを得るまでは戸惑いもしたが、いまやメリットしか見えない。ブルベでeTrexを使っている人には是非ともトライしてもらいたい機能だ。


余談ですが、ブルベの計画、タイム管理にはこのアプリがオススメです。
ブルベ管理用ソフト - ブルマネ
ブルベの計画を作成し、計画からのズレを計算するアプリです。どのくらい余裕があるかわかるので、よりブルベを楽しむ事ができます。



5. BaseCampの入手と起動
さて前置き終了。ルートのナビを実行するためにはルートファイルを作成しなくてはならない。必要になるのがルートファイルを作成するためのソフトウェア。これにはGARMINご謹製のBaseCampをオススメする。Windows版もMac版もある。
GARMIN BASECAMPのダウンロードサイト
ルートファイルの作成だけでなく、eTrexに保存されている情報の管理編集もできる。以後の説明もBaseCampベースで行っていく。

画面はMac版。GARMINをPCに接続しないでBaseCampを起動するとこのような感じで、同梱されているグローバル地図が表示される。この地図だと情報が荒すぎて何もできない。
PCにeTrexを接続ししばらく待つと、左上のエリアに接続されたデバイスと、それに含まれる地図が表示される。今回はeTrex30xのmicroSDにインストールしてあるOSM地図を使うのでそれを選択する。すると画面にもその地図の中身が表示される。
重要なのは必ずeTrexで使う地図をBaseCampでも選択する事。同じOSMの地図であっても日付やバージョンが違うと含まれる道路情報が違ってくるので、実際にeTrexで使う地図をBaseCampで選択し、ルートファイルの作成作業を行う。


6. ルートファイルの作成
先日の美唄200kmを説明材料に使ってみる。マイコレクション上に美唄200kmのフォルダを作成し、そこにルートラボからダウンロードしたトラックファイルをドラック&ドロップしてコピーする。
わかりやすくするために美唄200kmのトラックを緑で表示した。このトラックと同じ経路になるルートファイルの作成を行う。

スタート地点の百合が原病院あたりを拡大。ツールバーにあるルート作成ツールをクリックし作成を開始する。クリック直後には「空のルート」というタイトルのダイアログも表示されるが、使わないのでクローズ。
上記①のスタート地点、②の右折地点を順番にクリックする。そうするとルートファイルに①と②が登録され、その間の道順はGARMINのロジックにより算出される。
緑のトラックファイルと同じように真っ直ぐルーティングして欲しかったが、GARMINのロジックだと紫のような道になってしまう。これを回避するためには①と②の間に③のポイントも設け、①->③->② という順番でルートを引いてみる。
今度はトラックファイルと同じ経路とする事ができた。こんな感じでトラックファイルを参照しつつ、それと同じ経路になるようにポイントをセットしていく。セットしたポイントは道案内で通知される場所にもなるので、なるべく少なめに作るのがベター。最小限のポイントで作成して行き、期待しない経路となったら、それを回避するためのポイントを追加していく感じで良いかと思う。

こんな感じでゴールまでポイントを追加して行き、トラックファイルと同じ経路となるルートファイルが出来れば完成である。美唄200kmの時は、PCや休憩ポイント、スタート地点をウェイポイントとして登録し、それを含めたルートファイルを作成した。

完成したルートファイルのポイント一覧。スクロールしないと見きれないぐらい大量。

追加されたポイントだけでなく、曲がり場所では通知が行われる。通知が行われる場所と内容の一覧。同じくスクロールしないと全部見れない数。

完成したルートファイルはBaseCampからeTrexに転送できる。転送後はWhereToのRoutesの一覧に表示されるので、ナビの目的地として設定できるようになる。


7. ルーティングできない場合の回避策
問題なくトラックファイルと同じ経路となるルートファイルを作成できる時もあれば、そうでない時もある。今回の美唄200kmだと、どうやっても同じ経路とならない場所が2箇所ほど。
一つ目は五の沢林道。地図データでは山頂付近で道路が分断されているようで、どうポイントしても迂回するルートになってしまう。下の図だと緑の道が経路としたいトラック。どうしてもそこをトレースできない。
同様に国道337号に合流するジャンクション。これも地図に合流路の情報がないようで、トラックと同じルートを再現できず。
このような場合、以下のような方法を回避策とする事ができる。

(1) ポイント単位でアクティビティを「直行」にする
ルートファイルは全体だけでなくポイント毎にもアクティビティをセットでき経路探索の条件とする事ができる。今回の場所、分断前のポイントのアクティビティを「直行」にセットする事で道路の有無に関わらず直行する経路が算出されるようにできる。こうする事でBaseCamp上ではうまくルーティングされるように見える。ただこのようにセットされたルートファイルではeTrex上ではうまくナビが動作しない事が多い。目的は線を引くことではなく、ナビが動作しないと意味がないので、現実的な回避策ではない。

(2) 分断点前後でルートファイルを2つに分割し運用。
道が分断される前と後でルートファイルを2つに分け、実際にナビを行う際に、一つ目のルートファイルでのナビが終わったら2つめのルートファイルでナビを実行し、運用でカバーする方法。ブルベ全体を通して数個のルートファイルになる程度であれば、有効な回避策。

(3) その区間の道案内はあきらめ、トラックファイルの軌跡を頼りに走る。
トラックとルートで経路が異なる範囲がわずかであり、その発生場所があらかじめわかるのであれば、道案内を無視しトラックをフォローして走るのが一番簡単な回避策となる。eTrexではルートでの経路と、トラックの軌跡を同時に表示する事が可能である。

今回の場合、まず(1)の回避策を一つ目の分断点(五の沢林道)と2つめの分断点(337号合流点)に適応したルートファイルを作成してみたが、実機でナビを開始させる事ができなかった。そのため(1)の方法はNG。次に(2)の回避策を一つ目の分断点に対して行い、ルートファイル1とルートファイル2を作成した。ルートファイル2には依然として分断点が存在するが、その範囲はわずかなので走行時にトラックをフォローするという(3)の回避策で運用した。


8. 実際に使ってみる
最終的にルートファイルを2つで構成し運用した。加えて分断しない状態でのルートファイルと、ルートラボからダウンロードしたトラックファイルもeTrexに転送しておいた。

ナビを開始する前に、トラックファイルも常時表示させる設定にする。トラックマネージャーからアップロードしたトラックを選び「Show On Map」で表示されるようになる。
          

次に作成したルートファイルでナビを開始する。目的地一覧にあるRouteにはアップロードした3つのルートファイルがあるので、分断点1より前のルートファイルを選択。
     

まずは五の沢林道までのナビを開始。
トラックファイルも同時に表示する設定となっているので、それは緑で表示されている。ルートファイルによるナビ経路はピンク色。ピンクのほうが太く表示されるので、経路が重なっていてもわかる。
ちなみにルートファイルに問題があってナビが実行できない場合は、この画面の「Go」というボタンがいつまでたっても表示されない。逆に言うと「Go」が表示されない時は何らかの問題がルートファイルにあるといえるので、ルート内容を要確認だ。

ナビ開始直後。百合が原病院あたり。

最初の右折ポイント。矢印で表示されている。
こんな感じで進んでいく。

一つ目のルートファイルが完了したら、分断後の二つ目のルートファイルを指定。ナビ開始。

337号への合流の仕方がオカシイ。 
この部分は回避策(3)を使い、トラック(緑の線)をトレースし、道案内は無視する。
といった感じだ。

美唄200kmは道中ほとんど雨だったという事もあり、やはり道案内機能は便利だなと思った次第である。


9. 運用までのまとめ
今までダラダラと書いた手順をまとめるとこんな感じかな。

0. ルートファイルを作成する環境つくり
1. ルートラボからブルベコースのトラックファイル取得
2. BaseCampでトラックファイルを参照しながら、ルートファイル作り
    経路をうまく作成できない場合は、回避策を駆使
4. eTrexに転送し、ナビを開始できるかを確認 (Goボタンがでるか?)
    問題がある場合は、ルートファイルを再チェック
5. トラックファイルも含めてeTrexに転送
6. トラックファイルも同時に表示する設定とする
7. ナビ開始

ブルベで走ってみると予想外のルーティングがされてしまう事もあるので、トラックファイルを常時表示しておくのは必須。最後の命綱である。これは忘れられない。

ルートファイルをつかったナビが実機でちゃんと開始できるかの確認も必要だったりするので、意外と手間がかかるのは事実である。まあこれもブルベの事前準備だと思えば楽しくなってくるはず。それよりもブルベ中の道案内機能のメリットを堪能して貰えれば願う次第。是非挑戦してみて下さい。


10. ファイル拡張子について
これまでの説明でトラックファイルとルートファイルという言葉が出てきたが、両方とも同じ.GPXという拡張子を持つ。なので拡張子だけをみても、どっちがどっちだか判らないので、ファイル名自体をそれらを識別できるものにしたほうがよい。


11. マーカーピンの変更
もしかすると最初に書いたほうがいいかもしれない内容。eTrexの初期状態では、ルートファイルに含まれるポイントはマーカーピンの画像で表示される設定となっている。こんな感じ。

ポイントの数が増えれば増えるほど見にくさマシマシ。このマーカーピンの代替画像をCustomSymbolsフォルダに置くことで置き換える事ができる。極小の点の画像に置き換えると、こんな感じに変わる。

上記で使った代替画像はこれ。
これ良ければダウンロードし、下記のCustomSymbolesフォルダにおけばマーカーピンは消えてくれます。(ダウンロード先へのリンク 2019/5/24追記)
画像フォーマットやファイル名には指定があるものの、自分で好みのものを作る事も可能。作り方google先生まで。


12. GARMIN用OSM地図
OSMの地図データは世界規模で有志が作成しているもので、だれでもフリーで使えるものだ。OSMの地図自体は誰でも編集可能で、例えば最新のOSMで間違いを見つけた時は、アカウントをとればだれでも修正できる。今回の美唄200kmをルートファイルを作る上で見つけた分断点は修正しておきました。是非OSM Projectに賛同下さいませ。

このOSMの地図をGARMIN用に提供している人達がいる。とっても有り難い。eTrex等で使う方法も記載されているので、ご覧くださいませ。
https://osm-for-garmin.org/

2019/5/24追記
未確証ではあるのですが「等高線あり」の地図でないと道案内機能は動作しないかもしれません。動かないと地図の入れ替えになってしまうため「等高線あり」を使うことをおすすめします。


13. トラックファイルへの謝辞
そもそも主催者側からトラックファイルが提供されているのが有り難い。それにも感謝です。


14. その他、追記事項
2019/5/24
- マーカーピンの画像ファイルへのリンクを修正しました
- OSM地図を使う場合「等高線あり」の地図でないと道案内機能が動作しないかもしれません。念のため「等高線あり」を使うことをおすすめします。



Have fun!

4 件のコメント:

  1. 有益な情報ありがとうございます。
    少し勉強して試してみます!

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    1. ちょっとめんどくさいですが、がんばってくださいませ

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  2. こんにちは‼はじめまして!!
    美唄200kmで途中抜かれた二人組の赤い方です。美唄は土砂降りの中、お疲れ様でした!!
    私自身雨のブルベは良い経験になりました‼ありがとうございました。
    今回の記事、etrexのルート機能とても参考になりました。私自身も軌跡表示してるだけなので実際にこちらの記事を参考にして早速挑戦してみたいと思います‼
    やはり、少しは電池持ちが悪くなるのかが心配です……

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    1. taka yasuさん。美唄はお疲れ様でした。向かい風と単独走で気持ちが負けていた所だったので、同走させてもらってとても助かりました。amazonブランドの黒充電池を使ってますが、200km走行後でも目盛り一つぐらいの減り方でした。300km以上の時は替え電池も持ち歩きますが、600kmでも一回の交換で余裕でした。是非お試しくださいませ。

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